ずいぶん久しぶりの更新です。前回更新から1年以上空きました。
私のハロプロ熱が下がっているとか、今年度に新しく入ったコミュニティがラブライブ!のファンであふれていて幾分そちらのコンテンツに浸っていたということとは関係なく、このブログはもともと この話(下リンクに同じ)を文章にして自分の気持ちを整理したいとずっと思っていたところ一念発起して建てたもので、あと他に考えていたことやその場その場で浮かんだネタを記事にして、書きたいことが尽きたら放置される運命にあったまでのことです。
ukikusa.hatenadiary.com
ご挨拶は以上にして本題に入ります。
2月2日はモーニング娘。’17の牧野真莉愛ちゃんの誕生日でした。それで9期10期がサプライズをしたそうなんですが、これがちょっとひどいんじゃないか*1 といって一部で炎上していました。
この件自体について評論することは控えます。ここでは、一連の騒動を見ながら何となく考えていた、モーニング娘。ひいてハロプロの上下関係について書きます。
ハロープロジェクトには先輩後輩の序列があって上下関係が厳しいものと一般に認識されています。その年次の上下の決め方が、昔はただデビュー順でよかったのが、エッグや研修生ができてくると複雑になってきて、その一端がたとえば、2011年に鞘師里保(2010年のオーデ合格で直接11年にデビュー)が宮本佳林(08年にエッグ入りし11年当時もエッグだった)を「かりんちゃんさん」と呼んだこと*2 とか、エッグに入った順番とメジャーデビューの順番が入れ替わっている工藤遥と高木紗友希の関係性に現れています。
世間も、今のハロプロを知っている人なら上記のような状態から、知らない人なら全盛期のモーニング娘。*3 がテレビでやっていたことを見て、ハロプロには体育会的上下関係があるものと思っているでしょう。
しかし、このような認識は必ずしも正しくありません。たとえば娘。内の上下関係は、あるとき人為的に作られ、一度消滅した後、再度復活したものです。以下にしばし、娘。内の先輩後輩関係の沿革を概観しましょう。(私が視聴した限りのASAYAN、ハロモニ、うたばん等の動画、ラジオ音源等を資料としているため、不正確なところがある可能性をご了承ください。詳しい方には積極的にコメント等でご教示頂けると幸いです。また、いわゆる狼脳的な見方をしていることを自覚しています。)
1期と2期の間には、先輩後輩という観念はほとんどありません。3期の後藤真希は、年齢や見た目のインパクトやグループのプロデュース方針を大きく転換させたことから当初は1期2期と距離があるようでしたが、圧倒的な実力もあってかやがて友好的に受け入れられました。4期も、辻と加護が社会人としての振る舞いをわきまえていないのを問題視してシメたところはありますがおおよそ同様です。この時代には、後輩から先輩へのリスペクト、先輩から後輩への思いやりという付き合いは当然ありましたが、基本的にどの期のメンバーも序列を意識することない対等な関係でした。誰でも中澤さんを「裕子ちゃん」「姐さん」「おばちゃん」と呼ぶことができました。
潮流が変わったのは5期加入のときです。5期加入が娘。にどういう影響を与えたかということはまた機会があれば書きたいと思いますが、結論を言うと少なくとも加入時点での5期は一世を風靡するトップアイドル・モーニング娘。を名乗るに相応しいレベルにありませんでした。
このとき中澤さんは既に卒業していてリーダーは飯田圭織さんでした。悪く言いたくはないのですが、婉曲的に言って飯田さんはプライドが高すぎました。*4 彼女(と安倍さん)は5期と自分が同列に扱われることを嫌っていました。それで理不尽な後輩いじめみたいなことをやることになった、この頃に初めて出てきたのが上下関係です。間もなく5期メンバーは先輩を敬称をつけて呼ぶよう教育され、*5 いまどき野球部でもやらないような上下関係に服することになりました。同じく飯田政権下に加入した6期*6 も、一時ほど厳しくないにせよ同じ文脈で語ることができます。
再び潮目が変わったのは吉澤リーダー期です。「アットホームなモーニング娘。」とは高橋愛さんがリーダー時代に言っていたことですが、その源流は吉澤期にあります。吉澤さんはメンバーを厳しく締め付けるようなことをしませんでした。全盛期を支えた一人である彼女*7 にはカリスマがあったのでその必要もありませんでした。その親しい間柄から吉澤さんを名誉5期と呼ぶ人もいます。7期の久住さんには手を焼いていましたが、度が過ぎるときはシメていたし、信頼されていたと思います。政権末期に加入した8期の光井さんはあっという間に舎弟のようになっていました。
プラチナ期も、先述の「アットホーム」という標語に象徴される通りこの路線を引き継ぎました。厳密には高橋リーダーの統治と吉澤リーダーの統治は性質が違います。吉澤さんの放任路線は、その実は各メンバーと吉澤さんとの間の、一対一の体育会的な信頼を礎に成り立っていました。吉澤さんはいちいち口を出しませんが、シメなければならなくなればシメる力があり、藤本さんも一目置いていました。ただ放っているのではなくちゃんと一人一人を見ている、そのキャプテンシーに他のメンバーがついていきました。高橋さんのアットホームは、それに比べると少し馴れ合いに近いものです。高橋さんは他人に強く出られない人でした。根本的に自分に自信がないというのが一つと、もう一つは、リーダーになる前から6期は愛ちゃん愛ちゃんと言ってみんな懐いていましたが、その関係を壊す勇気がなかったのだと思います。プラチナ期のアットホーム路線は、グループ内で異常なほど偏って大きな役割と重圧を背負う高橋さんと、その高橋さんにグループの命運がかかっていて寄りかかるしかない他メンバーとの精神的な相互依存なのです。*8
細かい話はともかく、プラチナ期が、それまでで最もメンバー間の立場が近かった時代だったのは間違いなく、それが今でもプラチナ厨を惹き付ける一つの結晶を作ったことは特筆すべきことです。
しかしまた揺り戻しが起こりました。9期の加入です。
9期は娘。にとって実に4年ぶりとなる新メンバーでした。また、年長順に当時24,22,21,21,17歳だった既存メンに対して、9期は14,13,12,12歳でした。この年齢と芸能人スキルの隔絶は5期加入時を彷彿とさせるもので、さらに既存メンは後輩との接し方というものを忘れてしまっており、新人側も先輩に畏まるという図式ができました。やがて高橋さんが抜け10期が入ったときに残っていたのは、過去に激しく先輩に虐げられた新垣里沙、人付き合いをまったくしない田中れいな、はっきり言って腹黒い道重さゆみ、吉澤・高橋両リーダーに舎弟のように仕えてきた光井愛佳でした。ここに プラチナ組ー2011年加入組 という圧倒的な序列がにわかに浮かび上がり、それとフラクタルな 9期ー10期 という関係も併せて顕在化することになったのです。
1年後、11期加入の際にこの流れは決定的なものになりました。このときには新垣さんと光井さんは卒業していて、娘。内の人間関係は若く人数が多い9期10期が中心、それを蓮池のふちからビジネスライクに道重・田中が眺めている構図でした。ここに独り入った小田さんがグループ内での立ち位置を固める過程で9期10期との間に歴とした溝を作りました。私は率直に、これは11期が単独加入だったことが悪く作用したと思っています。
道重リーダー期の道重さんと他メンバーとの関わりは、吉澤リーダーのそれに近いものがありました。道重さんも、リーダーになったころにはグループ内融和に努めていたように思いますが、吉澤期のように後輩間の人間関係をほぐすまでの指導力はありませんでした。*9
そして田中・道重の卒業後、上下関係がある状態しか知らないメンバーたちのなかに、12期、13期が迎えられ、はたして上下関係に取り込まれて今に至ります。(概観終わり)
以上のように振り返ると、上下関係はモーニング娘。に常に付随したものではないことが分かります。個人的な見解としては、グループ内での先輩・後輩の上下関係は必ずしも要りません。それが機能する場面があるのは認めます。どういうときかというと、経験と力量の差があって現実に先輩が敬うに値するときです。5期加入時、9期加入時は、そういう意味では上下関係は生ずべき状況だったといえます。前者はやり方が過剰すぎましたが。
さて今の娘。を見ると、私に言わせれば、そのような関係は必要ない、むしろ「ない」べきです。変な序列を作るより一枚岩になって頑張ることが大事だと感じます。馴れ合いになってはいけませんが(若い人たちは規律で縛らないとそうなりがちです)、吉澤さんや道重さんのようなカリスマもいないことですし、プラチナ期的なアットホームなグループを目指すべきです。
しかし展望はというと、これから娘。がそのようになれるとは思えません。さきほど軽く述べましたが、上下関係がなかったときを知っている現役メンバーが一人もいないのです。吉澤さんは5期が入るまでかなり先輩と打ち解けていたし、いわゆる「派閥」に属さず、フラットに人を見ることができる人でした。そのような人が上に就いたからこそ吉澤期はあのようになりました。しかし現メンにその再現を期待することはできません。
モーニング娘。についてはここで切り上げて、他のグループについても少しだけ見てみましょう。
完全なる同期だけで構成されている今の℃-uteには上下関係は当然ありません。エッグ・研修生入りした時期は異なるがデビューは同時のJuice=Juiceなども同様です。
メンバーの加入・卒業を繰り返しているアンジュルム、カントリー・ガールズ内には上下関係がありますが、その程度は緩いものに見えます。*10 アンジュルムはスマイレージ時代の1期2期関係はやや断絶させられたものがありましたが、*11 3期を迎えて改名した後の2015年の雰囲気は特によかったと思います。カントリーは、どうしても嗣永さんが圧倒的に格上で同列に並べられることができない構成でしたが、後輩に「ももち先輩」と呼ばせ本人が積極的にお局キャラを演じることで一応の解決を図りました。
上下関係は必要ではないし、そこにハロプロの本質はありません。あったほうがいいときには導入し、必要がないときには努力してでも廃止すべきです。また、一度出来上がった関係は、時間が経つにつれて形骸化しなければなりません。新人と3年選手の経験・力量の差は大きいですが、5年選手と8年選手はハロメンとして対等に近いでしょう。
この記事では、グループ内での人間関係に注目して論じてきましたが、ハロプロ内でのグループをまたいだ関係でも原則は同じです。ただ、同じグループの仲間と比べて共に過ごしてきた時間が少ないために、幾らか距離が離れ、畏まった関係になるというわけです。